未来を変えにきた男


ある日、会社もクビになり、家内も出て行き、借金取りが玄関のドアを叩いている。
その火曜日に、その男はやってきた。
「私は未来から貴方を救うためにきました。人型ロボットです。ND-78-2です」

突然だった。もう窓から飛び降りて、色んな面倒なことから逃れようとしていた刹那
この自分をロボだと名乗る男は俺のパソコンデスクの前に現れた。

もちろん、子供の頃から沢山漫画は読んでいる。空想小説だって好きで読んだ。
SFだ。
藤子の少し不思議じゃないほうのSFだ。
タイムマシン的な乗り物か空間の歪みとかを使ってこのタイツの男はやってきたんだ。

不遇な人生の助け舟なんだ。
「本当!助けてくれるの?俺、もう立派な大人だけど助けてくれる?
じゃあ玄関の外にいる借金取りを何とか追い返してくれない?頼むよ」
とちょっと気持ちに余裕の出来た俺はこの黒タイツの男に柔らかい感じで頼んだ。

すると、奴はタイツの中からベレッタM92を取り出し、やおら玄関に銃口を向けてぶっ放した。
2発か3発打ち込み、玄関は静まり返る。

まるで展開が違う。
こんな温厚そうなタイツの男が拳銃でことを済まそうなんて。

どういうこと?
てゆうか、そうゆうこと?

そんなことを考えているうちに窓の近くまで来て、外にいる借金取りの仲間にまで発砲しだした。
今度はタイツの後ろからパイソンを出している。
何丁だ。こいつは何丁拳銃を持っているんだ。

ネコ型ロボ的な活躍を期待してたら、ターミネーター的な奴だった。
何だ、未来の俺はレジスタンスで中心的な役割を果たしているのか?

違うだろ。会社で遅刻は多すぎるし、社内じゃお気楽サラリーマンで
挙句の果てに、会社の金に手を出して、キャバクラ嬢に入れ込んで、妻に逃げられて
ヤバイ所から金借りて、今、こんな目に遭っているんだぞ。
なんだよ、コレ。
この黒いタイツの男は一体?

「どうします?貴方、早く逃げないと警察とかこの人達の仲間から追われますけど」

おめーじゃん!おめーが助けてくれるはずが、こんなことになってんだろうがっ!
「え、何?どうするの?あんたが助けてくれるんじゃないの?」
ちょっと呂律が回らない俺は、半ば呆れてタイツ男に聞く。
「助けますよ、じゃあちょっとこれに着替えてください」


「さ、行きましょう。貴方の未来を変えに」
なんだこりゃ?
全く、何がなんだか分からない。なんで俺までタイツを履かないといけ…
つーかこれタイツじゃなくて…ももひきじゃん!

「2022年の未来じゃ今、地球はとんでもないことになってます。貴方が、貴方の力が必要なんです」
すぐ先じゃん!11年後じゃん!なんだよ。未来どうなってんだよ…
嘆きながらも俺は黒タイツに連れられて未来の世界に行くことになった。

(続く)