増やす人


ダビデがいつになく高い声で
すぐ来い、すぐジョナサンに来いと言うもんで、
理由を聞いても
「電話じゃわからん」
の一点張りなもんで、行きましたよ、ジョナサンに。
きっとのっぴきならないことが起きたんだと
思うじゃないですか、ふつう。

そしたら、
植毛のようなことをした、とのことでして。

頭を見ろと言うんで拝見すると、
増えたんだかどうなんだか
言われてみれば確かに増えてるくらいですよ。
でもまだ途中の段階だそうで。
そりゃ電話じゃ分からないけどさ。

これからいっそう増えるであろう明るい未来に
目を輝かすダビデに釘を刺しましたよ。

ハゲとか、そんなことどーでもいーんだよ、と。


そもそもこれから先、我々が心おきなくハゲてもいいように
わざわざ名前をヘルメットアワーにして
何かありゃこれからヘルメットかぶって、

“ヘルメットで、危険も視線も防止”

ってキャッチフレーズまで考えたのに、
なんだその、
毛を増やして幸せになろうって魂胆は。



この日の私の幸せは、あのコとケーキバイキングに行くことだったんです。
それがダビデとドリンクバー。

ダビデよ、お前はいいだろうが
私の幸せはいったいどうなるのだ?

そんな私をよそに
増えた毛先を愛おしそうにいじるダビデなのでした(↑写真)