これは恋ではない。


ダビデはバイキング娘に厳しい。
正確に言うと、私がバイキング娘にうつつをぬかすことに厳しい。

この間も、ダビデとスケジュールを合わせるのに手帳を見ていたら、
いつのまにかバイキング娘と会う日取りを考えていてダビデに怒られたし、

たまにはドリンクバーではなくケーキバイキングでも行かないかと誘ったら
「それはバイキング娘と行くための下見だろう!」
一喝却下されてしまった。

どちらも、ダビデが正しい。

私としては悪気はない。どちらかというと無意識だ。
ダビデとミーティングできる日を探っていたのはホントだし、
それがいつのまにかバイキング娘との日取りに変わっていたのはわざとでない。

たまにはケーキバイキング、というのも気分転換のつもりで言ったのはホントだし、
だけど、一度予習しておいてバイキング娘にカッコいいとこを見せたいというのはある。


ダビデはドスをきかせた声で言う
「おぬし、恋をしてるのではあるまいな」

ま、まさか。
これは恋ではない。
親子ほど歳の違う女性に惚れるなんて。

ただ、会うだけでいいのだ。
キャバ嬢でも、ホステスでもない。
仕事としてでなく、私と一緒にいてくれるなんて
フカヒレスープのお中元よりありがたいぞ。

それとも、これから彼女の狙いが明らかになるのか?
金も地位もないぞ私は。


ダビデはそんな私を冷めた目で見ている。
いい歳こいたオッサンが、という目で見ている。
その通りだ。オッサンはオッサンでもハゲちらかしたオッサンだ。
いったい何ができる。

しかし無意識のうちに彼女のことを考えているのなら、
自分ではどうにもならない部分もある。

そこでダビデに頼みごとをした。

「おいダビデよ、もし私がキティちゃんのストラップをしていたら
 迷わずちぎって投げ捨て、目を覚ませと一喝してほしい」

バイキング娘はキティちゃんが大好きなのだ。

(↑写真・バイキング娘の話をすると、好物のカレー南蛮うどん膳を前にしても
  説教を始めるダビデ氏)