ダビデは見ていた。


偶然ファミレスで出くわしたバイキング娘。
ダビデには気づかれず、店の外で彼女と話をすることに成功したと
思っていた私だが、
ダビデは全てお見通しだった。
すべてを見ていながら気づかぬフリして私を泳がしていたのだ。

それを明かされたときの私の落胆と恥ずかしさよりも衝撃だったのは
ダビデの一言だった。

「あれがバイキング娘?可愛いじゃん」



世間的に言えば、バイキング娘は可愛くも美人でもない。
それは私も分かっている。
しかし今の私にとっては可愛い。
男女とはそういうもんである。
だけど初めて見たダビデが可愛いと思うのはどういうことだ。
ダビデの特殊な好みにハマったのか?・・・。

よくよく話を聞いてみると、ダビデが言っているのは
あの時バイキング娘と一緒にいた友達のことらしい。

確かに友達は可愛かった。10人中10人がそう思う可愛さ。

「まぁ、バイキング娘の友達のほうは・・・」

と言葉を濁すダビデ。
そっちだ、今その濁したほうがバイキング娘なんだ。

ここで私は見栄を張ってしまった。
ダビデの勘違いを否定しなかったのだ。

「ま、まぁね」

なんて言って可愛い友達のほうをバイキング娘ということにしてしまった。
ダビデの嫉妬にも似た詮索はつづき、
ついには

「今度会わせろよ」

ときた。

ダビデが勘違いしていなかったら、断じて会わせん。
バイキング娘は私の大事なバイキング娘だ。
しかし、友達のほうに興味があって会いたいと思っているのならありではないか。
私とダビデ、バイキング娘とその友達、ダブルデートなんていうのも成立するのではないか。

これなら私がバイキング娘と会う口実もできる。

そこからは不思議とトントン拍子だった。
バイキング娘もその友達もOKということで4人揃って会うことになった。
まさかホントにダブルデートになるとは!
(それにしてもダブルデートって言い方、今もするのか!?)

問題は、ホントのことを言うのか、言わないのか。
言うとしたらいつ言うのか、だ。

すべて正直に話してしまえば何の問題もない。
私はバイキング娘と、ダビデは友達とよろしくやればいいだけのことだ。
しかし、ダビデがホントのバイキング娘の印象について残念そうに話すあの感じが
ひっかかる。
ホントのことを伝えると、今度は私のことを残念な男として蔑むに違いない。

別にバイキング娘を褒めてほしいわけではないが、
そんな残念そうに言うことはないだろう。
そしてその残念な彼女と毎日でも会いたいと思っている私はどうなるのだ。

バイキング娘は私にとって可愛い!
他人は関係ない!
とも言い切れない、なんだこの感覚は。


ついに明確な答えと作戦を導き出せぬまま、
そしてダビデには勘違いを与えたままで当日を迎えてしまった。



当日。
待ち合わせ場所に現れたバイキング娘とその友達に放った
ダビデの一言が私を混乱の境地へと陥れた。