ダビデの牽制球



「ちょっと牽制の練習をさせてもらうぞ」

そう言うとダビデ氏は、
夜分のジョナサンで食事をしながら、
写真のように↑するどい眼光を
自身の左方向へ突き刺す。

皿からおかずを取り上げたと思いきや
シャッと視線を送る。

どうやら店内を忙しく動き回る店員さんを
見ているようだ。

草野球の試合でもあるのかと尋ねると、
そうではないと答える。

ダビデ
「最近ついてないことが多いんだ。
それは己の怠惰な心のあり方にあるのではないかと思ってな。
言ってみれば我々は常に無死のランナーを背負った人生だ、
ランナーには常に警戒しなければならない。
スキを与えないその心のありようを取り戻すために
食事中でも牽制の練習をするのだ」

「そ、そうか」

私もダビデに賛同し、内野手を担当することにした。

ダビデ
「申し訳ないが、とりあえず今はあの少しエロい感じのたぶん人妻であろう従業員
をランナーと仮定させてもらう。
今は無死2塁だ。貴様はショートとしてあの二塁ランナーを牽制しろ」

こうして我々は、少しエロい感じのたぶん人妻であろう従業員を警戒することになった。

するとその従業員、我々の過多な視線に気づいたのか、
笑顔でこちらの席に向かってきた。

ダビデ氏
「リードが大きいぞ!」

すかさず二塁へ送球するダビデ氏。
私もベースカバーに入る、しかしボールはグラブを弾き、
あらぬ方向へ転々と転がる。

「空いてるお皿、お下げしてもよろしいでしょうか?」

我々
「は、はい・・・」

ランナーは進塁し、無死3塁となった。