巡り合い、ソラ


何でもココ最近は宇宙の神秘による奇怪な現象が巻き起こり
「今世紀最後の」とか「生きている間には無理」的な天体現象が巻き起こっているらしい。
なんと云っても先月訪れた金環日食。
テレビでも雑誌でもネットでも大々的に取り上げられ、出勤の人々の足を止めた。
ワタクシといえば、朝から馬鹿みたいに寝てしまい、天体ショーを見逃す愚行を犯した。

その日の撮影後、その話題になり
「フーコーは日食は見たぞな、もし?」と問いかけると
ワタクシが注文した
シナモンフォッカチオ・バニラアイスクリーム添えを太陽と月に見立て
その日のフーコーを再現してくれたのであった。

フーコー卿「あれは私が私用で出かけようとした朝7時半。車に乗り込み
地下駐車場から車を出したとき、空は夕闇のように暗かった」

語りだしたフーコーはフォッカチオの皿を指差し
「まさしく私が空を見上げ、雲間の中から微かに見える金環日食を目撃したのである」


「泣き叫ぶ鳥達、逃げ惑う野良猫。その一瞬で宇宙が私に何か語りかける。
『食べなさい、ハンバーグを。飲みなさいドリンクバーを』と」

語るや、傍らにあった生ぬるくなったアイスコーヒーをグビリと一口飲むフーコー。
「私は思った。あぁ私がハンバーグを食べるのは宇宙の意志なのだ。宇宙が与えてくれたハンバーグ。
宇宙ハンバーグ。宇宙のドリンクバー。
私は私用をほっぽらかし、すぐさま近くのファミレスに赴き、ハンバーグを食べようと思った
しかし、朝食メニューでハンバーグは食べれなかった。だからスクランブルエッグを食べた」

一息ついて、フーコーは目頭を抑え、涙を流しながら
「美味かった。宇宙の…宇宙の味がした」

そのどうでも良い話しを聞きながら、フォッカチオのバニラアイスが溶け出してしまったのは
ワタクシにとっての神のイタズラだったのであろうか。

「私とスクランブルエッグは出会ってはいけない関係だったのだ。
でも、出会ってはいけない二人だからこそ、それは甘美で背徳な愛ではなかったのだろうか」

頬に涙を垂らし、力説するフーコー。

午後2時の憂鬱。