なだ(涙)、そう?そうそう


あれはいつだったであろうか…

ワタクシとフーコーとフーコーのお気に入りの女性バイキング娘と
バイキング娘の友達のルーシー・リュー似の女性とダブルデートをした時のこと。

季節はクリスマス間近だったような気もする。
東京駅で待ち合わせた我々はイルミネーション輝く並木道を歩いていて
特に弾む会話もなく、イルミネーションに目を奪われていたようだ。

そのルーシー・リュー似の女性はスキューバダイビングなんぞを趣味に持ち
時折、海外などに行ってダイビングをしているとのことだった。

カリブ海の海はどうだとか、エーゲ海の海はどうだとか
海の話をするのが好きなようだ。
勿論、4人で食べに行ったレストランは地中海料理屋だった。
ワタクシは魚介の類の苦手で、生モノは遠慮していたら
ルーシーが「魚食べれないの?信じられなーい」
などと言い放つ。
知っている。ワタクシはそういう人間を知っているのだ。
自分が好きなモノが他人が嫌いと云うことを認めない人間。
ワタクシはグッと我慢をして
「そうなんだよ。全く日本人失格だよね」
などとおどけた返しをすると
「本当そうだよ。マジで。つーか日本人じゃなくても生魚食べる国あるから」
グッ。
ワタクシは返す言葉もなくなり、怒りと憎しみでルーシーを見定めていると
フーコーが
「ダ、ダビーほら煮魚なら食べれるだろ?この私が頼んだ煮魚を食べるといい」
と色々やっきになって気を遣ってくれた。
バイキング娘もその空気感に気付いたのかワタクシに焼いた貝やら、
ブイヤベースなどを取り分けてくれた。
その間ルーシーは生魚を次々に喰らい、
「今度沖縄でダイビングやりに行こうよ」
などと空気を読めない発言を次々にしやがる。
海なんか一人で行きやがれ。
などと心の中で呟きながら黙々とブイヤベースの汁だけを飲み干したのであった。


あれから半年。
先日、打ち合わせと云う名の食事会でフーコーに聞いてみた。
「そういえば、半年くらい前に会ったあのダイビング女は一体どうした?」
突然のことに驚いたフーコーは
「実は…あのダイビング女こそ、バイキング娘だったのだ。彼女に一緒に沖縄に行こうと
誘われたが行けなかったんだ。それで最近全く連絡がないんだ」
と云われ瞠目した。
あの、ダイビング女こそバイキング娘。
気付かなかった。
どうりで海の話ばかりをすると思ったら、そういうことだったのか…
てっきりバイキングやビュッフェばかり好きなのかと思ったら本当の意味で海好きだったのか…
そうなるとワタクシがバイキング娘だと思っていた心優しい女性こそがその友達。
覚えていない…
一体どんな顔だったのか…
ルーシーのインパクトに圧され全く顔を覚えていない。

ワタクシは自らの手で何か大切な何かを失ってしまったようだ。
そのワタクシの喪失感をよそに、バイキング娘=ダイビング女に振られてしまうかもしれないフーコーは
涙を隠せないようだった。

古いアルバムめくり、ありがとうと呟いた。