決断力


カツラというのは不思議と分かる。
本人はどこまで分かっているのか知らないが、
一見して
「あ」
と思う。
それは生え際の不自然さだったり、
毛の量が多すぎるからだったりする。

先日、電車の中で向かいに座っていた
若いビジネスマン2人連れの片方がカツラだった。
2人とも今どき風にスーツを着こなし、
いかにも仕事ができる感じ。30代前半だろうか。

しかし1人がカツラだ。
冒頭に述べた理由からカツラだと、ほぼ断定できる。

もしそれがカツラではなく、自毛のヘアスタイルだったら、
二枚目ですらある。仕事ができてさらにイケメンである。

ここでひとつの疑問が浮かぶ。
となりの同僚(?)は気づいていないはずがない。
初めて見た私が感じるのだから、いつも一緒の同僚が
気づかないはずがない。
ならば、このカツラは、みんなが気づいていないことに
なっているのだろうか。
それとも本人も周囲も分かっていることになってるのか。

これが、私がカツラに踏み切れない要因でもある。
つまり、カツラと自分、カツラと周囲の人間との距離感を
どうしたらいいのか分からないのだ。

しかし今から私がカツラをかぶっても遅いような気もする。
周囲からしてみたら
「何を今さら」
だろう。これから出会う人の数は今まで出会ってきた数には
及ばないであろう、おそらく。

ということは、カツラという選択肢はすでに消えているとも言える。
私の決断力のなさが、その選択肢を消したのだ。
カツラとの距離感が・・・なんてウダウダ言ってるうちに、
時機を逸す。

その点、目の前の若いビジネスマンは決断をした。
少なくとも私より早く、カツラという決断をした。
その決断は早ければ早いほどいい。
決断できる男。
なるほど、だからこの人はきっと仕事もできるのだ。

若いビジネスマンに完敗である。

(↑写真は、何を血迷ったか、カツラではなくヘルメットをかぶった私たち)