君といた夏

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通りの先で待ち合わせている君をみつけた。
今日は浴衣姿で会ってくれるということだったから、会う前の僕は緊張と昂揚で
18時を過ぎても日は高く、夏の夜の蒸し暑さも君を想うと流れる汗も苦じゃなくなる。

藤色の浴衣で帯は黄色。
髪もアップしている君は普段の君以上に愛らしく、愛おしい。
奔放な君が今日に限ってはしおらしく、おしとやかに見えるのが可愛らしい。
いつまでも、君と居たい。
この夏の夕暮れが永遠に続けばいいと願う。
暮れていく町並みの影が君にかかり
二人の距離と親密さを絶対零度の氷に閉じ込めて
何万年も君とこの夏を感じていたい。

「どうする?もうお店行かない?もうマジ暑いんだけど浴衣」
「…うん」
そう、今夜は同伴で出勤する前に君と会っていた。
キャバクラの浴衣デーに同伴してくれとせがまれたからだ。
明日も浴衣デー。
明後日も浴衣デー。
君はこの夏何回浴衣を着て、何回同伴することだろう。
通りで誰かがビールやジュースを売る声が聞こえる。

そうだ、今夜はどこかで花火大会があるらしい。
それもお店に行けば、喧噪と誰かの下手くそなカラオケで
花火の音もかき消される。

君といた夏。
君と同伴した夏。


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