a room with a view


この日のジョナサンで案内された席は窓際だった。
仮にも“ミーティング”と称しているので事務的な話、プラスその他雑談を済ませば
あとはそれぞれ何をしようと自由なのだがそういう時に根本氏はいつもスマホを見る。
忙しい根本氏は常にスマホをチェックしている。
今どきっぽいちゃ今どきっぽい。それ自体に不満は何もないのだが、ただ、この日のように窓際の、眺めのいい席についた時くらいは、窓から広がる景色に目を向けたらどうだ、と思う。特にここは2階で、視界を遮る高い建物もないので風景は遠くまで伸びる。

根本氏よ、目の前はこんなにもひらけているのに、なぜ頭を下げてわずか30センチ先に
視線を落とすのだ。そこから広がる世界は仮想にすぎない。
頭を上げて外を見よ。
そこにある世界こそが、我々のいる世界だ。

と、ここまで思ってふと気づいた。
この根本氏の様相は、まるで我々の人生そのものを表しているようじゃないか。

思わぬ気づきにボー然とする私を見て、根本氏はニヤリと笑った。

(↑写真は、窓に背を向けてスマホをいじる根本氏)