寝ぐせで遅刻


とある日のミーティングに大遅刻した私の言い訳はこうだ。

「起きたら、寝ぐせがすごいことになってまして、それを直すのに
頭を濡らしたらボリュームのない髪がぺったりとなって
さらにボリュームがなくなりまして、そしたら
ピンとはねた寝ぐせが逆に目立つようになり、それを直すのと、
しかもぺったりとなった他の毛髪を、
さもボリュームあるように見せようとしなければならないので
時間がさらにかかってしまい・・」

しかし根本氏は手厳しかった。

「貴様の毛髪で寝ぐせが言い訳になると思うか?言い訳するなら
もっとましな言い訳をしろ」

それは誤解だ。
私は自分の毛髪量をアピールしたわけではない。
むしろ“ペッタリをボリュームあるように見せる”というくだりで
私の情けない毛量をアピールしたはずだ。
しかし根本氏には「寝ぐせ」という言葉が引っ掛かり、さも私が多毛がゆえの苦労をしてる、という風にとられたらしい。
これはなんとかしなければならない。そう思っていると根本氏が
「ところで、その寝ぐせとはどこなのだ」
と聞いてきた。
私は耳の後ろを指さし、
「ここだここ、まだ少しはねているだろう」
と訴えた。

すると根本氏、妙に納得した様子で顏が緩んだ。

「なるほど。そうか、ホントに寝ぐせだったのだな」

寝ぐせの場所が側頭部の、より下のほう、まだ私も根本氏も毛髪が多い場所、だったのである。
根本氏は頭頂部に近い方だと想像したらしい。
そんなはずはないのである。
頭頂部へいくに従って髪の量もコシもハリもなくなっていくのだから。

こうして誤解が解けてやっとメニューを開いたのでした。

(↑写真は、本文とは直接関係ないですが、私の“寝ぐせ言い訳”を聞いた時の表情はこれに近かった)