根本氏の正論


特になんの意味もなく、
ホントに何もなく深く考えずに

「最近、抜け毛が減った気がするんだよね」

と言うと、根本氏の眼の色が変わった。
言い訳するように私は
「いや、ホント、最近は枕周辺に落ちてる毛が少なくなった気がする。毎日細かく数えてるわけじゃないけど、なんとなく、そんな気がする。決して増えてるわけではないけど」

すると根本氏
「なるほど。増えなくても抜け毛が減っただけで我々には有り難いことだな。しかしどうだろう。それは比率の問題じゃないかな」

私「比率?」

根本氏
「たとえば頭髪の1%が抜けていくとしよう。多毛時代、頭に一万本の毛があったら、抜けるのは100本だ」

私「100本?けっこう多いな」

根本氏
「そうだ、それで日々の抜け毛に恐怖したわけだ」

私「寝起きの枕元とかな」

根本氏
「そう、しかしその結果、我々の頭髪は少なくなった。 すっかりハゲをネタにするくらい少なくなった。仮に今の毛髪量を100本としよう」

私「それは少なすぎじゃないか、いくら我々でも側頭部はまだあるぞ」

根本氏
「例えだ、例え。分かりやすくするために100本とする。すると1%は何本だ?」

私「1本・・・」

根本氏
「そう、それが今の貴様の現状なのではないか?つまり抜けていく現状が改善したわけではない、毛量の分母が減った分、抜ける毛が減ったのではないか。ということだ。確かに、抜け毛の本数が減ったのは事実だ。しかしそれは真実ではない」

おそらく、根本氏が言ってることは正論なのだろう。
しかし分かったような分からないような・・・
なにかキツネにつままれた気がするのは私だけだろうか。
いや、これは「油断するな」ということではないか。
それは賛成だ。
なにがどうあろうと、予断を許さない頭髪なのは確かだ。
抜け毛が減った気がするからと言ってそこで気を許したら何が起こるかわからない。

何気ない一言からあらためて背筋を正したわたくし。
颯爽と言い放った根本氏の頭髪が風になびいた、気がした。

(↑写真はいつぞやの根本氏。眼鏡をかけると理論的な人間に見えるから不思議)