気の毒アイスコーヒー

画像 174 (400x267).jpg

私は作家の楡山小朗太。
年1で取材と偽って、旅行に行く。
今年はどこに行こうか、近所の「気の毒カフェ」に行って
旅行パンフを繰りながら、暖かくなってきたからなのか
アイスコーヒーがメニューに載っていたので頼んでみた。
それはそれで冬の間は出ないだろうと思ったなのか
アイスコーヒーをおいてないのだ。
なんて気の毒な店だ。
冬だって存外アイスコーヒーを飲みたい時だってあるだろう。
それを突っぱねているのは、あまりにも気の毒だ。
5日ぶりに私以外の客が入ってきて、アイスコーヒーを頼んだのだが
「すいません…暖かくなってからじゃないアイスコーヒー作れないんです…」
平に謝っていた。
そんな光景をみていると、気の毒なのは従業員じゃなく、
このお客だな。と得心した。
そんなこともあったので、
メニューに手書きで「アイスコーヒー」と書かれていたので
小躍りして頼んでみた。
相変わらず、味は上手くも不味くもない。
むしろ普通でもない。
なんか薄味なのだ。
氷が多いのか?
コーヒー豆が悪いのかすら分からない。

それでも、アイスコーヒーを飲みながら旅行パンフを見ていると
いつものひそひそ声が聞こえてきた。
黄「以前旅行に行ったら、カツアゲされて、
有り金全部持っていかれたって?お気の毒に」
緑「え?地元のやくざに観光料として、
有り金全部と住所まで言わされたの?なんてお気の毒に」

遠回しに旅行に行くことをくさしているようで、気分が悪くなった。
私は特に観光目的で旅行に行くのではない。
地方地方の夜の街を歩いて、痛い目になったり、
今回は大丈夫だったりと修羅場をくぐるのが好きなのだ。
だから、多少の危険は顧みない。
ふと、私が一番気の毒な人間じゃないかと頭によぎる。>