サイゼリヤ百景「貧乏ゆすりと几帳面」


となりに座っている痩せこけてハゲかけてるサラリーマンはずっと貧乏ゆすりをしてる。
ドリアを食べながら、会社の資料を見ながら、ずっと右足を小刻みに動かしている。

正面のテーブルにいる初老の女性はタバスコの蓋を取り、口のところを紙ナフキンで丁寧に拭いている。
何度も何度も、口のところにナフキンを沿わせ、拭いている。

サラリーマンの貧乏ゆすりが止まった。微動だにせず資料を凝視している。眉間にしわを寄せて凝視している。止まっているのは貧乏ゆすりだけでなく、サラリーマンの時間が止まっているようだ。

初老の女性のところにパスタが届く。待ちかねたようにタバスコをパスタにかけ始める。何度も何度もビンをパスタに向かって振る。けっこうな辛さになってるであろうところで、タバスコを置き、ようやく食事が始まった。

サラリーマンの貧乏ゆすりがまた始まった。