最高に旨いエア寿司 ~富山県魚津市 鮨大門~

大門太郎 氏…北海道すし善で学ぶ。

一、真鯛 2日ねかせ、湯びきする。大葉を挟み、梅肉をのせる。
二、甘海老の昆布〆 煮きりとまぜた甘海老のミソをのせる。
三、北寄貝(北海道産)軽く炙る。酢橘と塩で。「地元のお客さんには地元にはない素材を出します」
四、春子 皮目を炙り、甘酢で〆、笹の葉に挟み一晩おき香りをうつす。
五、サクラマス ヅケで。芽ネギをはさむ。
六、喉黒 日本海の赤い宝石と呼ばれる。握る直前に炙る。
七、鰤 1週間ねかせる。塩で。
八、中トロ(30キロの入善産マグロと、160キロ油津産を食べ比べ)いい鮪は築地に直行しちゃうことが多い中、競り落とす。
九、小鰭
十、鰻の白焼き 焼いて15分ほど蒸す。握る直前にもう一度焼く。塩で味付けし、柚子皮をふる。


下剋上の空しさ.jpg
<本日のエア>下剋上
エアなのについ、現実のごとく財布を気にしてしまう私。
エアなのだから支払いなど気にせず、高いものでもどんどん食べればいいのだ。
というわけで、今回はカウンターで「お好み」に挑戦となった。結果的に。
なぜなら店の入り口で「カウンターはお好みでの注文のみになりますがよろしいですか?」と聞かれ、お決まり等がよいのならテーブル席になるというが、テーブル席を待つ客は列をなしている。しかしカウンターは空いている。現実では無理だがエアなので迷わずカウンターを所望した、というわけだ。
席について握りだけでよいか尋ねる。酒を飲まないので子供のようにひたすら握りを食べたいのだ。快くOKの返答。
さっそく、小鰭から始まり、時にガラスケース内の切り身が何の魚なのか尋ねながら食べ進む。そして車海老を注文した時に逆格差を知る。
まずはヅケを注文した折、「これから漬けますの少し時間がかかります」との答え、じゃあそれを待ってる間に、車海老を。と言ったら不敵な笑みを浮かべながら奥へと入っていった。ガラスケースの中にはすでに茹でてある車海老が山積みになっている。それを握るだけなのだからヅケより早いだろうという算段だ。
しかしなかなか職人さんは帰ってこない。帰ってきたと思ったら先にヅケが出てきた。
あれ?車海老は?
と内心思ったが、ひとまず何も言わずヅケを食す。ホントはこういう即席のヅケよりも湯霜にしてあるような“あらかじめの”ヅケが好きなのだが、なんて思いながら腹へおさめると続けて車海老が出てきた。
「茹でたてです」
なんと。ガラスケースの中にある車海老ではなく、生を茹でてくれたのだ。そこで気づいた。ガラスケースの茹でてある車海老はテーブル席用なのだ。格上のカウンターでは注文を受けてから茹でるということか・・。
今までは茹で済みの車海老派に属していた私だが、図らずも下剋上を果たし、上流階級へと足を踏み入れていた。飛行機で言えばビジネスクラスとエコノミーの違い。
そして見るからに違う車海老を口に運ぶ。
う、旨い・・・。
早川氏がテレビでよく言っていた「甘さ」がある。今まで食べていた車海老の握りではそんなことちっとも感じなかったので早川氏の言うことが分からなかったのだが、こういうことなのか・・・
軽い衝撃。値段の差、というのは確実にある。そしてその格差というのは激しく大きい。世の中はなんて無残なのだ。
一瞬でも下剋上出来たことをホントは喜ばしく思って、庶民を下に見る快感でも味わえばいいものを、そんな気分にはなれなかった。やはり金がすべてだなと、理不尽さだけが後味として残った。