彼氏についての悩み

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チェーン店系カフェはだいたいが隣の席との距離が近くて、満席になると、
自分と、向かいにいる友達と、その横にいる全く知らない人も皆、同じテーブルを囲んでるような錯覚さえおこる。
そうなると、話しも周りに筒抜けになる可能性があるので恐ろしい。

先日1人で入ったカフェでは、彼氏の悩み相談をしてる20代後半(と思われる)女性がいた。
このかたの声がまた大きくてよく通る。演劇とかやったらいいのにと思うくらい(やってたりして)声がとおる。
ゆえに、話してる内容が周辺に響き渡る。聞くなってのも無理だ。どうしても耳に入ってくる。
この、逃れられない他人の話はうだつのあがらない彼氏についてらしい。
同棲してるぽいのだが、その彼氏があまり仕事もしたくない、やりたいこともはっきりしないタイプらしい。
「この先結婚ていうこともあると思うんだけど、これじゃあ不安だよ」
と、不満をぶちまける。
一方、話を聞く友達(女性)は普通の声量なので私の席からははっきりと返答の内容は聞こえないが、あたりさわりのない「それは大変だねぇ」程度だ。聞かされる側の態度としてはこれが正解だ。話す側は答えを求めているわけではないのだ。とよく聞く。男どもはどうしても答えを言いたくなるのでダメだと。

彼女の悩みはつづく。
最近は喧嘩も多く、いろいろ言ってもラチがあかないらしい。
先日、ひさしぶりに会った男友達はスカイツリーを作った大きな会社に就職していて
「休日何してるの?」と聞いてみると、休日は休日で資格を取るための勉強をしてるという。
その男友達と彼氏を比べて、ため息をつく。
「もし、今を乗り越えたとしてもさ、結婚してもこんな感じが続くってことだよね?」

彼女たちと並びのテーブルには偶然にもひとり客がずらっとならんでる。それぞれスマホをいじったり、書き物をしてるが、彼女の悩み話は絶対、耳に入ってるはずだ。聞こえつつもそれぞれのことに没頭してる、と思うとその光景も面白い。

聞く側の彼女は相かわらず模範的な返答だ。女子たちのおしゃべりはこうして成立するのだと感心すらする。
しかし私のようなおじさんはどうしても言いたくなる。
「そんな彼氏は別れなさい」
と。おじさんのほうが少し長く生きてるので分かるけど、それは別れたほうがいい。でも別れられないのも男女、ってのも分かる。でも結果としては別れた方がいいんだよなぁ。彼女が心配する「この先も同じことがつづく」のは正解なので。

矢のようにしゃべっていたかと思ったら、矢のように店から出て行った。
あとには私と、ずらっと並ぶひとり客が残された。そして静寂。