ふたりの関係(本日のエア寿司)

高級寿司店でよく見るのがおじさんが若い女性を連れてくる、というパターンだ。
若いカップルが、特に若い彼氏が張りきって彼女を連れてくる、というのはとても微笑ましくて、このデートが上手くいくよう「彼氏がんばれ」と心の中で応援しますが、おじさんがカッコつけようと若いコを連れてくる姿は同じおじさんとして斜に構えて見てしまう。こちらは厳しいエア修行中なのに、というヒガミや妬みや羨ましさ、では決してなく。

この日も親子ほど歳の離れた男女がやってきた。いかにもお金持ってそうな40代後半くらいのおじさん、そして身なりのちゃんとした品のある若い女性。女性は社会人1年目くらいか、へたしたら学生かもしれない。
もしかしてホントに親子か?と思ったが、おじさんの話し口調が少し距離のある、丁寧な「ふーん、そうだよね、そういうのあるよね」
という感じなので、おそらく女性は会社の部下、とこの時点で拝察した。新入社員を食事に誘ったか。

おじさんは店に何度か来てる風で、親方に話しかけつつ、寿司の感想を述べつつ、自分のダンディぶりをアピールする。
そんな感じにため息が出る私ですが、でも同じ男として、同じおじさんとして気持ちはよーく分かるんです。分かりすぎるくらい分かるんです。わたしも同じようにカッコつけてみたいかもしれない、でもこうして客観的に見ていると、こうはなりたくない、という自分も出てきます。
が、しかし。
なにかおかしい。
あれ?
女性がタメ口だ。
おじさんに向かって
「どういう感じ?」
とか、タメ口だ。

ここでハッと気づいた。
これはホントに親子だ。父と娘だ。
勇気をもってとなりに座るこの二人をチラッと見てみる。
…鼻筋が、似てる気がする。

となると娘のタメ口はいいとして、父のこの距離ある感じの話し方はなんだ。
まるで父の方が娘に気を使ってるような。
そうか、まさに気を使っているのだ。
年頃の娘、へたすりゃウザいとか言われて嫌われてしまう父親。もうすでに家では言われてるのかもしれない。そんな父と娘のふたりきりで初めての食事、なのかもしれない。
就職祝いか、ちょっと遅い卒業祝いか、今日のために父は張りきって寿司屋を予約したのかもしれない。

そうなると話は別だ。
最初に私が述べていたことはすべて撤回、この父を全力で応援したい。少しでもお父さんすごいと、お父さんカッコいいと思われてほしい。
この会食が上手くいくことを願わずにはいられないのでした。