チンジャオロースー

店先に掲げてあるメニューから「レバニラ炒め定食」を所望して入ったのだが、結局注文したのは青椒肉絲定食だった。
時刻は11時30分頃、せまい店内に客が続々と入ってくる。
となりに向かい合って座ってるのは年老いた母とその息子と思われる二人組。
母はおしゃれなイヤホンみたいのを肩にかけてるが、どうやらこれは補聴器らしい。耳が遠い母に息子は大きい声で話しかける。
「で、歳はいくつくらいなの」
「わたしなんかよりは全然若いわよ」
「そうじゃなくて、歳がいくつか聞いてるの」
やや乱暴に、そこそんなに突っ込むとこかと思うくらい問い詰める。
「あ、あぁ、70くらいかね」
母は面食らった様子で答え直す。

向こうの席には作業着を着た二人組。
新人が電話で受けた仕事を、本来なら受注箱へと入れる書類を分担箱なるところに入れたせいで誰もその受注に気付かず、当日になってそれが発覚し、代わりに謝罪したことをぼやいてる。

注文をとるのも料理を運ぶのも、そしてお会計も、ひとりの女性がすべてこなす。淡々とこなす。次々と入る注文を厨房へ通し、その順番を守って料理を出す。
まずは親子へラーメン2つ。次に作業着のふたりにもラーメン2つ。

母はその見かけによらず食欲旺盛で、息子よりも早く食べ終えた。
「食べるの早いね」
思わず感嘆の声を漏らす息子。

作業着のふたりは子供の学費についての話に花が咲いてる。

次々と客が入ってくる。
やがて親子が席を立つ。
そして作業着の二人組も午後の仕事へと向かって店を出て行った。