帆帆魯肉飯

日曜日しか営業してない魯肉飯のお店があるという。魯肉飯のみのお店。しかもその日曜日すら休むことがあるらしい。さらに場所も下町のしぶいところにある。
ということはよほどスケジュールが合わないと無理だ。そしてそこを狙ってわざわざ行かねばならない。
これは何時間も並ぶ行列カレーに匹敵する、いやもしかしたらそれ以上の難易度だ。

とある日曜日。その日は突然やってきた。
この日曜は営業していて次の日曜日は休みらしい。わたしもこの日曜はいいけど次の日曜日はダメだ。なにか運のよさを感じる。では、行ってみるか、となった。
ネット上での評判はそこそこイイので、しかも営業が限定的であるとなればなおさら、大行列の可能性はある。この千載一遇のチャンスにわざわざ行っても、やはり並ばずあきらめるのか?自分よ!?

電車を乗り継ぎながら向かう途中、ずっと自問自答。並ぶのか、並ばないのか。自分への問いかけに自分が答える
「いや、並ばない」
そう、きっと無理だ。これだけわざわざ行っても列が出来ていたら引き返すだろう。わたしにとっては、酢豚にパイナップルが入るくらい無理なのだ。

駅からは少し歩く。このあたりは下町の古い家屋が並ぶ。古き良き佇まいと、さびれていくもの悲しさが同居している風情に居心地の良さを感じる。

遠くから店が見えてきた。
おそらくあそこだろうというところに人だかりが見える。やはり行列か。予想できた結論にあえて落ち込みながらもさらに近づくと、それは列ではなかった。大人二人と中学生くらいの女の子がケン玉をしている。
この3人が魯肉飯の店と関係があることはピンときた。
以前ビリヤニを食べに行ったときと同じ感じだからだ(参照:サイト内検索で「カラチの空」を)
それにしてもなぜけん玉か。みんなでけん玉をやろうイベントを同時開催中なのだろうか。
店の前に到着すると人が並んでいることはなく、ガラス越しに見える店内も席は空いている。むしろガラガラだ。もちろんド昼食の時間は避けて変な時間に行ったので。時間ずらし作戦は成功だ。

しかし店に入るにはこのけん玉をかいくぐらねばならない。ひとりの大人が大技を失敗して私の前に倒れ込んでくる。間一髪避けながら、隙をついて扉へ近づくと
「どうぞー」
とけん玉の大人が声をかけてきた。やはりお店と関係ある人か。

中に入ると先客はひとり(女性)
穏やかな、人柄の良さそうな女性店主と、バイト(?)の若い男子ふたりが切り盛りしてる。
古い建物をリノベーションした店内は、イスから小物にいたるまでセンス良くまとまっていてオシャレだ。
そして魯肉飯セットを注文。

やがて続々と客がやってきた。やはり人気店か。しかしその誰もがお互いに挨拶を交わしていて、女性店主とも顔見知りらしい。しかも皆、無印良品みたいな人たち(と、いつも勝手に命名してるのだけど、無印良品に売ってそうな服を着てる人たち。綿よりは麻、綿ならオーガニック、ぺったんこ靴。ゆったりとしたシルエットで着こなし、でもアート系とはちょっと違う、みたいな)
なるほど、日曜日だけ営業とあって商売が主目的ではなく、仲間たちが集まる場、というノリなのだろうか。普通の食堂とは違う独特の雰囲気につつまれる。もしかして平日は普通にOLやってって、休みの日に趣味の延長上で、ということかもしれない。

そして魯肉飯登場。
お皿もレンゲも、ひとつひとつに女性店主のセンスが光る。
定番の卵とたくあん、に加えて高菜?が載ってる。高菜というのは初めてだ。
いただきます。
ひとくち食べて最初に思ったのが「お、これがホントの魯肉飯」
私は台湾に行ったことがないので何がホントの魯肉飯か分からないはずなのに、そう感じる、感じさせる魯肉飯。
今までどの店も現地の人が作ってる魯肉飯でしたが、ここの女性店主は日本人(たぶん)。魯肉飯好きが高じてこうなったらしい(と、ネットで読んだ)
その魯肉飯愛がそうさせるのかもしれません。日本大好き外国人のほうが日本人より日本の文化に詳しい、というのに近いかも。

魯肉エリアから食べ始めて最後にたどりついたのが高菜エリアだったのですが、これ、両方混ぜて食べたほうが美味しかったかなぁなんて後悔しつつ食べ終わる。
客が増えて忙しそうな女性店主にお会計のタイミングをうかがってると、入るときに「どうぞー」と言ったけん玉男性が私に気付き対応。
え?店員さんなの?
けん玉イベントの人かと思ってた。
ここにいる人全体的に(先客の1人女性をのぞく)知り合い感が強いので、どこからが常連客でどこからがお店の人か分からない…。

それはともかく、また来たいと思ったのだけど、これに関しては日にちと時間が合うかという運しだい、なのです。