昭和は健在なり

見知らぬ街をアテもなく歩いていると、古びた商店街に出た。
ところどころシャッターが閉まり、商店街というほど店は連なっておらず、ご多聞にもれずここも時代の波にのまれているのだろう。
開いているお店は昔からの営みを感じさせ、まぎれもなく、昭和がそこにある。
等間隔に並ぶ灯りにところどころ設置されたスピーカーから、安っぽい音質でBGMが流れてるのも昭和の商店街だ。

「♪さみしさも悲しさも いくたびか出会うだろう だけどそんな時でも さらば涙と言おう」

選曲も昭和。
時代に取り残されているのではなく、あえて昭和にとどまってるかのようだ。
すると

「さらばぁ涙と言おぉ~」

と口ずさみながら初老の女性が通り過ぎていく。
通りを歩くのは高齢者ばかりで、そのせいか、誰一人としてスマホを見たり操作してる人はいない。
どこでも、どこへ行っても、皆スマホに目を落としてる現代、ここではスマホの存在すら感じられない。

そんな光景の中にいると、昭和にタイムスリップしたのではと錯覚する。
いや、錯覚でなく、実際にそうであってほしい。
昭和に郷愁を感じるあまりなのか、現実逃避をしたいのか、
そこは自分でもよく分からない。