そば処 梓

またも十割蕎麦の店へ。
しかし何も言わずに出されて、これが十割かニハか分かるかといったらさっぱり区別がつかない。
そんな素人のわたしです。
店内は狭いながらも和風な佇まいで風情のイイ空間。
ホールを仕切るのは若い女性ひとり。わたしのようなおじさんから見るとこの世代の女性は皆可愛く見えてしまうもので、わたしと入れ替わりで会計する年寄りも
「はい、680万円ね」
なんていう冗談でそのコと絡みたくなるのもよく分かる。
戸惑いながら笑って応える彼女。
最後まで冗談を言い続けるその年寄りを見送った後、わたしのところへ来て注文を取る。そしてざるそばを持ってくるとこまでソツなくこなす。やがて調理場へと消えた。

きっとアルバイトなんだろうと思っていると、奥から聞こえてくる彼女が占い師に見てもらった時の話ぶりが自由奔放、ざっくばらんなので、この遠慮のなさはもしかしたらこの店の娘なのかもしれない、そんなことを考えながら蕎麦を手繰る。

うーむ、それにしても十割とそれ以外の見分けがつかない。十割だと色が濃いんじゃないかと、これまた素人考えで想像するが、ここのはそんなに濃くない。
やはり風味とか香りで判断すべきものなのか。わたしのような鈍感には難しい壁だ。
直接は関係ないが、食べ進めていくと下のほうはけっこう水浸しだったりした。

いつのまにか、彼女の占い師話は終わっていた。